はじめに:なぜ声かけが大事なのか
成績が下がったとき、親としては焦りや不安を感じるのが当然です。「どうして?」「ちゃんと勉強してるの?」と問い詰めたくなる気持ちもよくわかります。けれど、その“ひと言”が、子どものやる気をそいでしまったり、自己肯定感を傷つけたりする可能性があることをご存じでしょうか?
成績が下がったタイミングというのは、子ども自身がすでに“何かしらのショック”を感じていることが多いものです。そんな時、かける言葉ひとつで立ち直りが早くもなれば、深く落ち込むこともあるのです。
そこでこの記事では現役東大生ライターの「けんけん」が「成績が下がったときにしてはいけない声かけ」と「代わりにかけたい言葉」を中心に、親としての関わり方について詳しく解説していきます!
NG声かけ①:「なんでこんな点数なの?」
成績が下がったテストの答案用紙を見たとき、つい口をついて出てしまう言葉。それが「なんでこんな点数なの?」です。親としては驚きと心配、そしてちょっとした怒りが入り混じった状態でこのセリフを言ってしまいがちです。しかしこの問いかけは、子どもを追い詰める典型例でもあります・・・!
この言葉を受け取る子どもの心の中には、次のような感情が広がります。
- 「また怒られる…」
- 「わかってくれない…」
- 「何を言っても責められる…」
成績が下がった理由は、必ずしも「サボったから」「やる気がなかったから」ではありません。たとえば、授業の進度についていけなくなっていた、内容が難化していた、体調不良や人間関係で集中できなかった……など、背景には多くの“見えない要因”があることも珍しくありません。
ところが、「なんでこんな点数なの?」という一言は、まるで子どもを“怠け者”“ダメなやつ”と決めつけているかのように響きます。すると、子どもは本音を語れなくなり、防衛反応として「知らない」「別に」「どうでもいい」と投げやりな態度になるかもしれません。これは、「無関心」ではなく、“心を守るための壁”です。
代わりにかけたい言葉:信頼ベースで聞く
では、どう声をかければよいのでしょうか?
おすすめは次のような言葉です!
「今回のテスト、自分ではどうだったと思う?」
この言い方には、“責めるニュアンス”がありません。まずは子ども自身に考える余地を与えます。もし子どもが「全然できなかった…」「ちょっとサボっちゃったかも…」などと話し出せば、それはもう前向きな対話の入り口です。
また、こんなふうに続けるのも効果的です。
「じゃあ、次に向けて何か変えたいことある?」
「何か困ってることがあれば、いつでも話してね」
このように、原因を問い詰めるのではなく、“これからどうするか”に目を向ける声かけをすることで、子どもは「次はやってみよう」と前向きに行動できるようになります!

NG声かけ②:「ちゃんと勉強してたの?」
テストの点数が下がった子どもに対し、多くの保護者が口にしてしまうもう一つの言葉がこれです。「ちゃんと勉強してたの?」。親としては、「勉強していなかったのなら原因はそこだし、していたのなら方法を変える必要がある」と考えているのかもしれません。
しかしこの言葉は、子どもにとって信頼されていないと感じさせるセリフです!
子ども自身も、点数が悪かったことには少なからずショックを受けています。そのうえで「ちゃんとやってたの?」と言われると、「頑張ったのに認めてもらえない」「結果しか見てもらえない」と感じてしまいます。
さらに、「ちゃんと」という表現はとてもあいまいです。どの程度を“ちゃんと”と判断するかは、親と子で大きくズレていることも多く、誤解を生む温床になります。
「疑う」のではなく「信じて確認する」
子どもが反発したり無言になったりする前に、こちらから歩み寄るような表現に変えてみましょう!
「今回の勉強、やり方とか時間の使い方ってどうだった?」
このように、“攻める”のではなく“分析のための対話”という形で声をかけるのがポイントです。
あるいはこういった声かけも有効です。
「やってたのに思うように点数につながらなかった感じかな?原因って何か思い当たることある?」
子どもにとっては、「自分の努力を信じてもらえている」という実感が何より大事です。そうした信頼ベースのコミュニケーションが、失敗からの立て直しに直結します。
NG声かけ③:「◯◯ちゃんはもっといい点取ってたよ」
この言葉も、つい言いたくなってしまう親御さんは少なくありません・・・。特に兄弟姉妹やクラスメイトに成績優秀な子がいると、「なんであの子はできるのにうちの子は…」という比較の気持ちが浮かび、無意識に口にしてしまうのです。
しかし、これは子どもの自己肯定感を大きく下げるNGワードです。
比較された側の子どもは、「自分はあの子より劣っている」「自分の努力や頑張りは認められていない」と感じてしまいます。これは、勉強へのモチベーションだけでなく、親子関係そのものにも深い傷を残します!
さらに、「誰かと比べられる環境」で育った子は、自分軸ではなく他人軸で物事を判断するようになりやすく、将来的な自己肯定感の低下にもつながります。
「比べる」のではなく「個性を尊重する」
では、成績が下がったときに、どんな言葉が適切なのでしょうか?
それは、他人との比較を避けて、子ども自身の“過去”と比較することです。
たとえばこんなふうに声をかけてみてください。
「この前より、英語は上がったね!今回の国語はどうだった?」
このように、本人の成長に注目した声かけは、自己肯定感を守りつつ、前向きに取り組む意欲を引き出すことができます。
また、こうした言葉もおすすめです!
「今はちょっと苦手でも、あの子にも苦戦した時期は絶対あったよ。焦らなくて大丈夫」
こうした一言は、競争ではなく成長に目を向ける“安心感”を子どもに与えることができ、親子の信頼関係も深まります。
NG声かけ④:「次はちゃんとやりなさい」
これもよく聞く声かけの一つですが、実はかなり曖昧かつプレッシャーの強い表現です。
「ちゃんとやりなさい」と言われても、子どもには「何をどうすれば“ちゃんと”なのか」が明確に伝わっていません。結果、「とりあえず机に向かう」「長時間勉強する」など、“量重視”の非効率な勉強に走りがちになります!
そして、もし次も結果が伴わなかった場合、「また怒られる」「もうどうせできない」と諦めモードに入ってしまうことも少なくありません。
「曖昧な命令」ではなく「具体的なアドバイス」を
「次は頑張りなさい」よりも、次のような声かけを心がけましょう。
「次はどこを重点的にやろうか?」
「一緒に計画立ててみようか?」
このように、子どもが“次に何をすべきか”を明確にイメージできるようなサポートをしてあげることで、行動につながりやすくなります。
また、次のような一言もとても効果的です!
「この前より少しでも良くなるように、一緒に作戦を考えてみよう!」
これは、責任をすべて子どもに押しつけるのではなく、「親も味方である」というメッセージを伝える言葉です。子どもにとっては、ひとりでプレッシャーを抱える必要がなくなり、安心感と自信を持って次に進むことができます。



成績が下がったとき、親ができる本当のサポートとは
成績が下がることは、決して珍しいことではありません。成績は波があるものですし、思春期の心や体の変化、環境、先生との相性など、子ども自身にコントロールできない要素も多く含まれています。
親にできることは、「成績を管理する」ことではなく、子どもが“もう一度頑張ろう”と思える状態に整えることです!
そのために大切なのは、以下の3点です。
子どもの努力や過程を見ようとする姿勢
「がんばってるね」「毎日やってるの、見てるよ」
こうした声かけは、成果ではなく“努力”に注目する姿勢です。子どもは安心し、もっとやってみようという気持ちになれます!
過去ではなく“これから”に目を向ける
「この点数だったけど、次に向けて何ができるかな?」
過去を責めるよりも、未来にフォーカスする声かけを意識しましょう。失敗も成長の一部だと伝えることができます。
親自身も完璧を求めすぎない
親だって感情があるし、時には言いすぎてしまうこともあります。そんなときは、「さっきの言い方、キツかったね。ごめんね」と素直に伝えることも大切です。親がそういう姿勢を見せることで、子どもも失敗を恐れず行動できるようになります。
おわりに:親の言葉が子どもの未来をつくる
成績が下がったときの親の対応は、子どもの“将来に向かうエネルギー”を左右します。焦りから出てしまう言葉が、子どもを遠ざけるのではなく、支えとなる言葉へと変わることで、親子関係もより深まります。
子どもは、期待されていることよりも「信じてもらえている」と感じることで、前に進む力を取り戻します。親としてできる最大のサポートは、「信じて見守る力」なのかもしれません!
どんなときも、子どもの努力と気持ちに寄り添う言葉を選んでいきたいですね。