はじめに:「勉強しなさい」と言いたくなる気持ちは当然
「またスマホばっかり見て…」「テスト近いんだから、少しは勉強しなさいよ!」
こう言いたくなる親の気持ちは、痛いほどよく分かります。将来困らないように、少しでも成績を上げてほしい、可能性を広げてあげたい――その願いから「勉強しなさい」という言葉がつい口をついて出てしまうのは、ごく自然なことです。
しかし、実際にはこの言葉が逆効果になっていると感じているご家庭も多いはず。言えば言うほどやらなくなり、親子関係もギクシャクしてしまう…。
どうすれば「やらせる」のではなく、「自らやる」状態をつくれるのでしょうか?
そこでこの記事では現役東大生ライターの「けんけん」が、「勉強しなさい」と言わずに子どもが自発的に動くための関わり方を、心理学や教育現場での実践例をもとに解説していきます!
親が言葉をかけても子どもが動かない理由
「勉強しなさい」と言っても、なぜ子どもは素直に動かないのでしょうか。親としては、愛情と責任感からの発言のつもりでも、実際にはその言葉が“逆効果”になってしまうことが多いのです。そこには、いくつかの明確な理由があります。
まずひとつは、「勉強に対する温度差」です!
親は「将来のために必要」「少しでも良い高校・大学へ」と長期的な視点から勉強の価値を語ります。しかし、子どもにとっての関心は「今この瞬間が楽しいかどうか」。勉強よりも友達とのやりとり、スマホ、ゲームなど、“今が楽しいこと”に心が向きやすくなっています。大人と子どもでは、そもそも視点が違うのです!
加えて、思春期の子どもは「自分で決めたい」という欲求が非常に強くなります。これは「自立」への第一歩とも言える健全な反応なのですが、その時期に“命令”されると強く反発してしまうのです。「勉強しなさい」は、単なる言葉以上に、「親にコントロールされている」という抵抗感を生む要因になります・・・!
また、「勉強=嫌なもの」という固定観念も無視できません。
小さい頃から「早く宿題しなさい」「またサボって」と言われ続けてきた子ほど、「勉強=怒られる対象」「親に責められるきっかけ」といったイメージを持ってしまいがちです。そうなると、机に向かうこと自体がストレスに感じられ、避けたいものになってしまうのです。
さらに、子どもにとって“言われたことをそのままやる”というのは、意外と心理的ハードルが高いものです。自分で納得していない行動は「意味がない」と感じるため、表面上は従っても、心の中では「やらされてるだけ」とモチベーションが下がってしまいます。
つまり、「勉強しなさい」という言葉が効かないのは、子どもがダメだからではなく、“親の言葉が、子どもの心に届いていない”から。そこに気づくことが、子どもとの関わり方を見直す第一歩です。

子どものやる気を引き出すのは「共感」と「選択」
「勉強しなさい」と言わずに、どうすれば子どもが自分から動き出すようになるのでしょうか。
その答えのひとつが、「共感」と「選択の自由」をセットで与える関わり方です!
まず、「共感」は子どもと信頼関係を築くうえでの土台です。たとえば、子どもがだらだらしているときに、つい「早くやりなさい!」と言いたくなる気持ちは分かります。しかし、そんなときこそ一歩立ち止まり、「疲れてるのかな?今日は学校で何かあった?」と声をかけてみてください。
たとえ勉強をしていなくても、「サボってる」と決めつけるのではなく、背景にある気持ちに寄り添ってみるのです。「分かってくれてる」という感覚は、子どもの安心感につながり、心を開くきっかけになります。
共感が生まれると、子どもは「指示される立場」ではなく、「対話できる存在」として親を受け入れやすくなります。このとき重要なのは、アドバイスを押しつけず、「どうしたいと思ってる?」と問いかけること。自分の気持ちや考えを話すことで、子ども自身が内省し、行動のヒントを見つけ出せるようになります。
次に、「選択の自由」も非常に有効です。人間は、強制されるよりも、自分で決めたことの方がモチベーションが高まる傾向があります。これは「自己決定理論」として心理学でもよく知られている現象です。
たとえば、「今から30分勉強しなさい」ではなく、「今からやる?それとも15分後にやる?」と問いかけてみる。
または、「国語と英語、どっちを先にやる?」と選択肢を与える。
たったそれだけで、子どもは「自分で決めた」と感じられるため、行動に対する責任感と納得感が高まるのです。
このように、「共感」と「選択」を意識した関わり方は、命令口調とは真逆のアプローチです。しかし、このアプローチこそが、子どもが自分から動き出すための“スイッチ”を押すことにつながります。
言い換えれば、「やらせる」のではなく「やりたくなる空気」をつくる。
それこそが、親にできる最高のサポートなんです!
勉強の意味を一緒に探してあげる
多くの子どもが「なんで勉強しなきゃいけないの?」という疑問を抱いています。この問いに納得感のある答えがないと、勉強はただの苦行になってしまいます。
このとき重要なのは、「勉強は将来のため」という抽象的な説明ではなく、今の自分にとって意味があると感じられる説明を一緒に探すことです。
たとえば、
- 「計算が速くなると、買い物のときに頭の中でサッと暗算できるようになるよ」
- 「英語が読めると、YouTubeで海外の人の発信も分かるようになるかもね」
- 「社会の知識があると、ニュースがちょっと違って見えるようになるよ」
こうした日常に結びついた価値づけをすることで、「勉強って、役に立つかも」と子ども自身が気づくきっかけになります。
また、「なんで勉強しなきゃいけないと思う?」と本人に問いかけてみるのも有効です。自分なりの答えを探す中で、勉強に対する姿勢が少しずつ変わっていきます。
結果よりも「取り組み方」や「工夫」をほめる
子どもが勉強したとき、「えらいね!」「点数高かったね!」と褒めるのは良いことです。
しかし、それが「点数や成果ばかりを褒める」形になると、子どもは「できたときだけ評価される」と感じ、失敗や低い点数を避けるようになります。
大切なのは、結果ではなくプロセスに目を向けることです!
「昨日より集中できてたね」
「休憩時間をうまく使ってたね」
「今日は自分から机に向かってたの、すごいと思うよ」
こうした声かけは、子どもが「努力の方向性」に自信を持つことを助けます。たとえ結果が出ていなくても、やり方や工夫を認めることで、「続けてみようかな」という気持ちを育てることができます。
“やらせる”のではなく、“やりたくなる”仕組みをつくる
家庭でできる簡単な工夫として、学習環境の「仕掛け化」があります。
たとえば、
- 勉強用のタイマーやアプリを用意して“ゲーム感覚”を取り入れる
- キッチンタイマーで「15分集中→5分休憩」のリズムをつくる
- 子どもが「やったこと」を可視化するチェックシートを貼る
- 1日5分だけの“なんでも質問タイム”を設けて、学習の悩みを一緒に解決する
こうした環境づくりによって、「やらなきゃ」ではなく「やってみようかな」と感じられる空気を家庭の中に作ることができます。
ポイントは、強制しないこと。「やらせる」のではなく、「やりたくなる」工夫をすること。
これは習慣形成のコツにもつながります!



「勉強しなさい」よりも効果的な言葉の力
最後に、実際に子どもにかける言葉の例をいくつか紹介します。
- 「今日、どこまで進めたいって考えてる?」
- 「○○って、どうやって覚えたの?教えて!」
- 「昨日の続き、どんな感じだった?」
- 「○○ができるようになったら、どんなことできそう?」
これらはすべて、子どもの視点に立った言葉です。命令ではなく、問いかけや共感をベースにした関わり方は、子ども自身の内側からやる気を引き出す大きな力を持っています。
おわりに:親の言葉は、信頼と安心から始まる
子どもを動かす最強の方法は、「勉強しなさい」と言うことではありません。
子どもの気持ちを理解し、選択の余地を与え、少しの努力を見つけて認める。
その積み重ねが、「勉強しようかな」と思える土壌を作ります。
親の役目は、「正しい方向に押す」ことではなく、「歩き出す力を信じて支える」ことです。
焦らず、比べず、信じて関わる。
その姿勢こそが、子どものやる気の芽を育てる最高のサポートになるはずです!